近年は、環境問題や燃料費高騰といった背景のなか、省エネの取り組みの重要性が高まっています。効果的な取り組みのためには、実際の取り組み事例を参考にするとわかりやすく、おすすめです。
この記事では、省エネの基礎知識とあわせて、取り組み事例を解説します。企業や家庭において、省エネを実施する際の参考にしてください。
まずは省エネとは何かを、改めて確認しておきましょう。
「省エネ」は省エネルギーの略語で、エネルギーを効率的に利用し、消費量を減らす取り組みを指しています。限られたエネルギーの使用量を抑えることで、地球環境への負荷と同時に、エネルギー消費にかかる費用も減らせることが特徴です。
近年は省エネの重要性が高まっており、政府も省エネを推奨し、その姿勢は政策や法令にも反映されています。
※参考:省エネって何?|経済産業省
省エネに似たワードとして、再エネがあります。
再エネとは、太陽光・風力・地熱・中小水力・バイオマスなどを用いた、再生可能エネルギーのことです。これらは使い続けても枯渇せず、自然のなかで再生することから、再生可能エネルギーと呼ばれています。
一方で省エネは、エネルギー消費量を抑えることで、エネルギーの種類を表すものではありません。
いま、省エネの取り組みはなぜ注目されているのでしょうか。省エネの重要性を解説します。
省エネは、CO2を減らし、地球環境の保護に貢献できる方法です。
化石燃料によるエネルギー消費はCO2を発生させますが、このCO2が地球温暖化の原因となり、世界的な問題を引き起こしています。環境の変化や気候変動を食い止めるために、省エネは欠かせない対策の1つとなっています。
近年はエネルギー需要が増加傾向にありますが、一方で現在使われているエネルギー資源には限りがあります。エネルギー資源を無駄に使っていると、いずれ枯渇してしまい、エネルギー不足になる可能性が考えられるでしょう。
そこで現在、限られたエネルギーを有効活用する取り組みが求められています。安定的にエネルギーを使い、経済活動を続けるためにも、省エネは欠かせない施策です。
経済産業省の調査によると、日本ではエネルギーを主に輸入に頼っています。2021年度のエネルギー自給率は13.3%です。この数字は、他のOECD(経済協力開発機構)諸国と比べて、38か国中37位と低い水準にあります。
また日本のGHG(温室効果ガス)排出量は、2021年度に11.7億トンとなっています。排出量のうち84%が、発電などのエネルギー消費によって発生するCO2です。
家庭でのエネルギー消費は高止まりにありますが、いずれにしてもCO2排出量を減らすには家庭、企業双方の努力を必要とします。
※参考:2023―日本が抱えているエネルギー問題(前編)|経済産業省
※参考:省エネって何?|経済産業省
家庭にも企業にも省エネのためにできることはたくさんあります。どのようなことができるかを見てみましょう。
省エネは家庭でも企業でも取り組むべき社会的な課題です。大変だと感じるかもしれませんが、省エネによってエネルギーコストを下げられるため、決して損失ではありません。
家庭では光熱費を削減することが、CO2排出の抑制につながるでしょう。企業の場合は、家庭と似た対策に加えて、省エネ法の遵守が求められます。
家庭では、省エネとはすなわち、光熱費の節約を意味します。具体的には、家電をこまめにオン・オフすることや、待機電力を減らすことが大切です。移動手段を自家用車から、徒歩や自転車、公共交通機関にするのも効果的でしょう。
家電を省エネ家電に買い換えれば、一時的に購入費用がかかりますが、長期間にわたって消費電力を節約できます。自治体で補助金が出るケースもあり、前向きに検討したい方法です。また電気だけではなく、節水も心がけましょう。
企業では、日常的に使う機器・設備の使い方を見直しましょう。OA機器については、席を外すときや退勤時には電源を切れば劣化を防ぐことにもつながります。空調の温度設定やメンテナンスに気を配ることも大切です。
事業所で使う機械類については、省エネ機器・設備を導入したり、太陽光発電などの再生可能エネルギーを利用したりするのもおすすめです。企業での省エネについては、実際の取り組み事例を次項で解説するので、参考にしてください。
企業で実際に行われた省エネ事例として、今回は2社の例を紹介します。
豊島区東池袋のオフィスビル「Hareza Tower」における、省エネの取り組み事例です。
この超高層オフィスビルでは、グリッド型空調機、グリッド型加湿器が開発・採用されたほか、センシングデータによる空調機冷媒温度可変制御を採用しました。これにより、建物全体の温度・湿度などをセンサーで検知し、エネルギー効率を最大限に高めた空調の運転を可能にしました。
建物全体の断熱性を高め、再生可能エネルギーも活用していることなどから、2022年度省エネ大賞「経済産業大臣賞(ZEB・ZEH分野)」を受賞しています。
資生堂の掛川工場(静岡県)では、省エネ提案システムの構築・施策に取り組みました。
化粧品製造にあたってのカーボンニュートラルの実現を目指し、エネルギー監視システムの導入によって、エネルギー使用量の最適化を実現しています。また再生可能エネルギーの導入や、生産プロセス別エネルギーの可視化によって、エネルギー消費の多いプロセスを見つけるなどの対策を実施しました。
取り組みの結果、2022年度省エネ大賞「資源エネルギー庁長官賞」を受賞しています。
工場では通常、エネルギー消費が多いため、省エネのポイントもたくさんあります。工場での省エネの取り組み事例を解説します。
工場で再生可能エネルギーを活用すると、省エネ効果が高いといえます。
工場の屋根に太陽光パネルを設置した事例では、作った電気を自家消費することで購入電力が減ったため、電気代やCO2排出量の削減にもつながっています。導入コストがかかる一方、その後のコスト削減効果が高い方法です。
老朽化した施設では、装置などのさまざまな部分で余分なエネルギーを消費する傾向にあります。
古くなった冷却装置を、冷温同時供給ができるヒートポンプに更新した事例では、冷水製造による回収熱を、別工程の加熱に再利用できるようになりました。ロスになっていた熱エネルギーを利用することで、電力消費や電気代の削減につなげています。
毎日のように使う照明は、見逃されがちですが省エネの大きなポイントです。
照明を水銀灯からLED照明に更新したことで、電気代の節約効果を得られた事例も多くあります。水銀灯や白熱電球と比べて、LED照明は少ない電力で同じ明るさを維持できることが特徴です。LED電球は熱くなりすぎないため冷房効率も高められるでしょう。
デマンド監視システムとは、電気使用量の監視システムを指します。30分の最大需要電力のことをデマンド値と呼びますが、この値が上がると契約電力が上がるため、監視システムによって設定電力を超えそうなときに通知を行いました。
結果この事例では、電力消費量が増えたときに、使っていない設備を停止するといった電力管理を実施することで、契約電力の低減につなげています。
従業員の意識を高めることで、省エネを実現した事例もあります。
この事例ではエネルギー消費を可視化するシステムを導入し、従業員の誰もが消費量をモニタリングできるようにしました。システムを利用して実際の省エネ効果を示し、取り組みを従業員に自分ごととして捉えてもらった結果、省エネへのモチベーションが生まれました。
企業や工場で省エネに取り組むと、企業の社会的なイメージアップに役立ちます。地球環境に向き合う姿勢は消費者や投資家から評価されやすく、商品やサービスが消費者に選ばれる、投資を得られやすくなるといったメリットもあります。
初期費用がかかる省エネもありますがランニングコストを抑えられるため、長期的に見ればコストダウンが可能です。機器・設備を長持ちさせられることもメリットでしょう。
世界的にはどのような省エネが行われているのか、アメリカと中国の事例をみてみましょう。
アメリカで取られている省エネ施策の1つが、「Energy Efficiency Resource Standard(EERS)」という政策です。
この政策において、電力会社やガス会社といったエネルギー供給事業者は、自社の営業において省エネ義務量が設定されています。州ごとで取り組み方が異なるものの、大枠としては、省エネ目標を達成できれば補助金が交付され、達成できない場合は罰金が課されるのが主軸です。
この政策により、省エネ・経済成長・環境保護・技術革新といった、複数の効果が期待されています。
※参考:米国・欧州における省エネルギー政策について|株式会社 住環境計画研究所
中国では、エネルギーの安全保障と低炭素化を目指す政策に取り組んでいます。エネルギーの安全保障とは、安定的なエネルギーの供給だけでなく、経済成長・国家安全保障・環境問題への対応などを視野に入れた表現です。
中国は2021年~2025年のエネルギー関連政策の方針として、5年で13.5%のエネルギー消費量削減、重点産業のエネルギー利用効率・主要汚染物質排出の抑制水準の引き上げを設定しています。エネルギー資源確保とともに、再生可能エネルギーの利用促進などが図られています。
※参考:2025年までのエネルギー政策の方針発表、石炭のクリーン利用も推進(中国)|ジェトロ(日本貿易振興機構)
企業として省エネに取り組む際、まずは、エネルギー消費を可視化して把握することが大切です。可視化されると、省エネへの意識が高まるため、従業員が一丸となって対策に取り組むことも効果的といえます。
次に、可視化したエネルギー消費のデータから無駄を見つけ出して、実際に削減を開始しましょう。照明・空調・工場設備やOA機器など、細かく対策を実施するのが理想です。必要に応じて省エネ機器・設備、再生可能エネルギーの導入などを実施すると、より省エネの効果を高められます。
省エネの取り組み事例は、自社で省エネに取り組む際に役立ちます。自社でも省エネができないか、同じ業界の事例を探してみるのもおすすめです。
脱炭素を支援するWebサイト「ゼロ炭素ポート」では、省エネの事例や対策方法を多岐にわたってご覧いただけます。各社ソリューションと協力してお客さまのニーズにお応えします。実際に企業でできる省エネ対策について個別のご相談も可能です。お問い合わせもお待ちしております。
会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA