エネルギー消費が大きい工場では、省エネへの取り組みが一層求められています。工場での省エネは、燃料高騰への対応や、CO2削減などを目的とするもので、しっかりと実施すれば経費の削減にも役立つでしょう。この記事では、工場における省エネの重要性やメリットを解説します。省エネの具体的なアイデアや事例もまとめているため、ぜひ参考にしてください。
工場において、省エネ施策は重要な意味を持ちます。ここでは、工場での省エネ施策の重要性を解説します。
工場(製造業)におけるエネルギー消費の現状は、多い順に電力、蒸気・熱、石油・石炭、天然ガス、再エネなどとなっています。このうち半分近くを占めるのが、電力です。世情の流れから電気料金が高騰している現在、工場でもコストの上昇は避けられません。反対に電力消費量を抑えることでコストの抑制が期待できます。
※参考:令和3年度エネルギー消費統計結果概要|経済産業省
近年は、地球温暖化が世界的な問題となっている関係から、企業に大幅なCO2削減が求められています。日本では、2050年までのカーボンニュートラル実現を目標として掲げていますが、実現のためには各企業の取り組みが重要です。日常的に多くのエネルギーを消費する工場でも、省エネによるCO2削減に取り組む必要があるでしょう。
一定以上のエネルギーを使用する企業は、「工場等に係る省エネ法」において、法規制の対象となっています。同法の対象となる工場では、省エネ措置を実施し、エネルギー消費の低減を実現しなければなりません。また、条件によって、エネルギー管理者の選任や、エネルギー消費に関する定期報告が義務付けられます。
※参考:事業者の区分と義務|経済産業省
工場におけるエネルギーの管理項目は多岐にわたります。まず的確に計画を実現するためには、トップによる意思表示、エネルギー管理担当者の任命、人材育成など、管理体制の整備が必要です。次いでエネルギーの状況を可視化し、データ共有・理解・分析に役立てましょう。
エネルギー使用量や設備運転状況を計測し、記録をとったうえで、保守管理基準・補修・更新計画の策定を行います。必要に応じて運転マニュアルの作成・見直しを実施すると効果的です。
工場が省エネに取り組むことには、単にエネルギー削減を実現する以上のメリットがあります。
省エネによって、工場で発生するコストを抑えられます。消費されるエネルギー量が減れば燃料費を削減できるため、利益率の上昇や運用の効率化にも役立つでしょう。省エネ設備を導入する場合は初期費用がかかるものの、結果的にランニングコストを下げられるので、長期的に見ればプラスになると考えられます。
設備のメンテナンスや節電などは、省エネ施策の一環です。定期的な清掃や調整で故障を予防し、ランニングコストを抑えられる設備は少なくありません。メンテナンスを適切に実施することによって、設備の寿命を延ばせます。また、節電によって設備への負担を減らすことでも寿命が延びるため、買い替えの頻度を少なくする効果も期待できるでしょう。
省エネは、地球環境に直接関わる社会的な課題です。したがって、省エネへの取り組みは、社会的責任を果たすことでもあります。積極的な省エネ施策は企業のイメージアップに有効です。製品やサービスが消費者に選ばれることが増えやすく、売上の向上や資金調達に役立ちます。
工場における省エネへの取り組みはさまざまです。取り組みのレベルを3段階に分けたとき、それぞれの目安は以下の通りです。
・レベル1:日常業務に組み込める省エネ
・レベル2:専門家のアドバイスにより実施できる省エネ
・レベル3:設備投資が必要な省エネ
これから省エネに取り組もうという場合は、まずはレベル1から始め、事例などを参考にしながら段階的に取り組みレベルを上げるとよいでしょう。
再生可能エネルギーを活用した省エネの方法には次のようなものがあります。
工場で太陽光発電を導入するには、工場の屋根に太陽光パネルを設置する方法が一般的です。工場は、屋根のスペースが広いケースが多く、太陽光パネルの設置に適しています。屋根に設置された太陽光パネルで作った電気を工場で自家消費でき、電力会社から電気を購入せずに運用することが可能になるため、経費削減効果の大きい方法です。
蓄電池とは、電気を貯めておける装置のことです。工場内に蓄電池を設置し、太陽光発電による電気を蓄えておけば、必要なタイミングで利用できるメリットがあります。太陽光発電だけを設置した場合、雨天や夜間には電力を購入しなければなりません。蓄電池があれば、時間や天候に左右されず電気を使え、非常時の備えにもなります。
冷凍設備を必要とする工場では、設備の状態を見直すことで省エネを実現できる可能性があります。たとえば、保存するものに対して、冷凍庫を必要より低い温度に設定していた場合、余分な電力を消費している状態です。冷凍庫の設定温度を3度上げた結果、冷凍庫の効率が向上し、消費電力を削減した事例があります。
製品を洗浄する水洗ポンプで、動力損失が生じていた事例もあります。ポンプを電力のみで動かすには、大きな電力が必要です。この事例では、水洗ポンプにインバータを設置し、流量をモータ回転数で調節するように改善を行いました。結果として、ポンプの消費電力が削減され、省エネを実現しています。
ボイラー室における省エネの事例です。蒸気バルブが保温されず熱放散が生じていたため、加熱エネルギーが余分に消費されている状態でした。この事例では、改善策として蒸気バルブに保温ジャケットを取り付けています。保温ジャケットにより熱放散が防止され加熱効率が上がり、コスト削減につながりました。
旧式の水銀灯を使用していた工場では、照明設備を交換することで省エネを実現した事例があります。水銀灯から高天井用LED照明に交換を行ったため、同じ照度でありながら、消費電力を削減できました。水銀灯とLEDでは寿命の長さも違い、LEDの方が長持ちするといった点でも省エネに役立つでしょう。
製造プロセスを改善することで省エネ効果を発揮できたケースもあります。焼付過程で再利用可能な熱が放散してしまっていた事例では、廃熱を回収し、導入外気の温度を高めたことで、バーナーの燃料となるLPGの使用量削減につなげています。製造プロセスにおいて温度上昇を必要とする場合、温度を下げない工夫をすることが大切です。
省エネはコストダウンにつながるとはいえ、省エネ自体にコストをかけたくない人も多いでしょう。ここでは、低コストの省エネ方法について解説します。
出入り口付近などにビニールカーテンを設置し、空気の流れを遮断することで、冷房・暖房のコスト削減につなげられます。空調は大きな費用がかかりやすく、省エネ対策として注目したいポイントです。出入り口が大きく開くことで空気の出入りが増えると、冷暖房効率は必ず落ちます。ビニールカーテンがあれば空気の出入りを最低限に抑えられるでしょう。
工場の壁や屋根に断熱塗装をすると、外気温が室温へ与える影響を軽減できるため冷暖房効率が上がります。屋根と外壁のメンテナンスに費用をかける際、断熱性の高い塗料を選ぶことがおすすめです。また、外気温の影響は窓から受けるため、作業エリアの窓を中心に断熱フィルムを貼り付けると効果があるでしょう。
社内で省エネの重要性を周知すると、全員で取り組む姿勢構築できます。関心のない従業員もいるため、省エネの概念やメリット、やり方を繰り返し周知することが大切です。エネルギー消費量をデータとして可視化すれば、自分ごととして取り組むモチベーションとなります。また、効果を上げるためには具体的な目標を設定すると良いでしょう。
工場の省エネは、次のような手順で進めるとスムーズです。
まずは、工場でのエネルギー消費の可視化から始めます。可視化できていると、工場にいる全員がエネルギー消費量を視覚的に理解しやすく、現状の把握が可能です。電気使用量を計測し、具体的な数値・グラフに落とし込むと分かりやすいでしょう。全員が見られる場所にデータを公開する工夫も必要です。
省エネ診断とはエネルギー消費を詳細に調査し、改善案をアドバイスするサービスです。特に改善策は、自社だけでの判断は難しいでしょう。専門家の提案があれば自社では気づかなかった省エネのポイントを把握でき、経営改善に役立ちます。
省エネにつながる施策を実行し、自社の課題に適した省エネ設備を導入する段階です。たとえば、LED照明を導入したり、空調を新たなものに変えたりすることで、消費電力を抑えられます。一方、太陽光発電システムや蓄電池を導入すれば、工場で消費する電力を自社でまかなえるためコストを下げられ、環境不可の低減にもなるでしょう。
省エネ活動を工場で行うと、余分なエネルギー消費やエネルギーコストを抑えられる可能性があります。現状を把握し、どの程度省エネが可能なのか、自社の省エネにはどのような方法があるのかを調べてみましょう。
省エネについて知るなら、情報サイト「ゼロ炭素ポート」の活用がおすすめです。ゼロ炭素ポートでは、脱炭素の未来に向けて総合的な情報発信を行っています。CO2排出量を計算し、さらに排出量を抑えるためのソリューションをご検討いただくことも可能です。ぜひ、ゼロ炭素ポートで脱炭素のヒントを見つけてください。
会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA