脱炭素宣言とは、企業や自治体が脱炭素への取り組み実施を表明することです。近年は地球温暖化の防止に向けて、脱炭素への注目が高まっています。脱炭素の取り組みに関する発表は、環境への配慮を周知するために不可欠ともいえるでしょう。
本記事では、脱炭素宣言とは何かや、脱炭素宣言への取り組み方などを解説します。ぜひ参考にしてください。
脱炭素とは、CO2排出量をゼロにすることです。カーボンニュートラル、ネットゼロ、ゼロカーボンなどとは微細な違いはあるものの、概念としては類似しています。近年では、地球温暖化を防止するためCO2排出を抑える気運が高まっており、脱炭素宣言によって、脱炭素への取り組み実施を表明する企業や自治体も増えています。
※参考:地域脱炭素とは|環境省
脱炭素宣言への注目が高まる背景には、地球温暖化があります。気象庁が発表している「世界の年平均気温偏差の経年変化(1891〜2023年)」によると、世界の年平均気温は100年あたり0.76℃のペースで上昇しています。
気温上昇の原因となる、CO2を含む温室効果ガスの排出量は年々増えており、近年では気温の上昇を抑えるため、世界的に脱炭素の取り組みが行われています。
※参考:世界の年平均気温|気象庁
※参考:Q8二酸化炭素の増加が温暖化をまねく証拠|国立環境研究所 地球環境研究センター
ここでは、世界や日本における脱炭素宣言の現状について解説します。
2015年に採択されたパリ協定以降、カーボンニュートラルを目指す国が増えています。カーボンニュートラルとは、CO2排出量を実質ゼロにする取り組みのことです。2022年10月時点で、脱炭素(カーボンニュートラル)宣言を表明した国は、アメリカ・EU・イギリス・ドイツ・フランス・インド・韓国になります。
※参考:カーボンニュートラルとは|環境省
※参考:2020年以降の枠組み:パリ協定|外務省
※参考:第1節 脱炭素社会への移行に向けた世界の動向|経済産業省
日本では、2020年に菅元内閣総理大臣が脱炭素宣言を行いました。この宣言によれば、日本では2050年までにカーボンニュートラルを目指すとされています。現在は目標達成のため、国を挙げて脱炭素の取り組みが進められている最中です。国としての目標を達成するためには、各企業や各家庭での脱炭素の取り組みも欠かせないものであるといえます。
※参考:2050年カーボンニュートラルを巡る国内外の動き|環境省
脱炭素宣言の後、日本では具体的にどのような対策が取られているか、またどの程度の成果が上がっているのかを解説します。
日本では脱炭素に向けた政策として、GX(グリーントランスフォーメーション)が策定されています。脱炭素のためグリーンイノベーション基金を設立し、積極的な取り組みを行う企業に対して支援が行われていることも特徴の1つです。
また現在、エネルギー関連産業、輸送・製造関連産業、家庭・オフィス関連産業における合計14の産業分野で、脱炭素に関する実行計画が重点的に策定されています。
※参考:我が国のグリーントランスフォーメーションの加速に向けて|経済産業省
※参考:2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略|経済産業省
環境省が2024年4月に発表した報道資料によると、2022年度の我が国の温室効果ガス排出・吸収量は、約10億8,500万トンで、2021年度に比べ2.3%(約2,510万トン)の減少となっています。CO2排出量減少の背景にあるものは、産業界および家庭での省エネ努力です。このデータからも、脱炭素宣言後に脱炭素の取り組みが実際に進んでいると判断できるでしょう。
※参考:2022年度の我が国の温室効果ガス排出・吸収量について|環境省
脱炭素宣言は、単にCO2排出量を削減するだけでなく、企業や家庭に別のメリットももたらしています。ここでは、脱炭素宣言に対応するメリットを解説します。
脱炭素の取り組みは、省エネにもつながります。取り組みを行うためにエネルギーを効率的に使い、作業を効率化していく必要性があるため、結果的にコスト削減が実現できます。消費エネルギーが減り、光熱費・燃料費を節約できることは、企業にとっても家庭にとってもメリットといえるでしょう。
脱炭素に取り組みエネルギーを効率的に使うことは、サステナブルな社会へ貢献することでもあります。大量生産・大量消費は、地球環境の破壊につながる生活様式です。近年は環境保護のため、サステナブルな社会実現の重要性が高まっており、脱炭素の動きには、このような社会的な要求にも応えられるというメリットがあります。
企業活動では常に一定のCO2が排出されるため、企業で脱炭素の取り組みを行うことは重要です。ここでは、企業ができる脱炭素の取り組みについて解説します。
CO2排出の大きな原因は化石燃料の使用にあります。したがって、化石燃料を使用しない再生可能エネルギーを活用すれば、その分のCO2を削減することが可能です。
有限の資源である化石燃料に対し、再生可能エネルギーとは、太陽光・風力・水力・バイオマスなど、比較的短期間に再生が可能なエネルギーを指します。高騰が続く化石燃料を使わずに再生可能エネルギーを利用することは、企業にとってのコスト削減にもつながります。
SBTi(SBTイニシアティブ)とは、世界的に行われている気候変動に対する取り組みです。SBT(Science Based Targets)は、パリ協定に基づいた気温上昇2℃未満を目指す、温室効果ガス排出削減目標のことで、SBTiへの参加は脱炭素の取り組みを促進することにつながります。
また、消費電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す企業連合、RE100(Renewable Energy 100%)への参加もおすすめです。
※参考:SBT(Science Based Targets)について|環境省
※参考:環境省RE100の取組|環境省
企業は脱炭素の取り組みによって、ESG投資を受けられる可能性が高まります。ESGとは、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の頭文字をとったものです。ESG投資とは、ESGに配慮している企業に将来性を見出した投資です。脱炭素の取り組みを実施することで将来性を見込まれ、資金を得られる可能性が高まるでしょう。
経済産業省では、脱炭素宣言を行い環境に配慮している企業の例として、ゼロエミ・チャレンジ企業リストを公開しています。投資家はこのリストを参考に、脱炭素に向けたイノベーションに挑戦する企業を選定できるため、リストに掲載されることで企業にもメリットがあるといえるでしょう。
ここでは、経済産業省のリストに掲載された企業における脱炭素の事例を紹介します。
NTT東日本は、農林水産省「スマート農業実証プロジェクト」に参加している企業です。ナシ栽培におけるスマート農業技術の取り組みを評価し、2021年10月に行われたTCFDサミット2021で選定結果が公表されました。
ICT技術を利用したナシ栽培では、ロボットを使った運搬支援やAIを利用した生育診断などが行われ、効率よく高品質のナシを生産することに役立てられました。
2021年には、川崎重工グループ「株式会社アーステクニカ」も選定されています。林野庁事業の1つ「林業イノベーション推進総合対策」における、「戦略的技術開発・実証事業」参画が評価されました。
同事業では、竹林管理の促進・放置竹林減少・竹利用による新たな産業の創出に対して、継続的なチャレンジが行われています。
脱炭素宣言は多くの自治体でも行われています。以下では、自治体が脱炭素宣言を行った事例について解説します。
東京都は、2019年5月に「ゼロエミッション東京戦略」を策定しています。この施策では、気候変動の「緩和策」と、すでに起こりつつある気候変動への「適応策」の両方を、総合的に展開していることが特徴です。
CO2フリー水素を活用し、使用エネルギーの脱炭素化を目指す方策を主軸に、プラスチック対策や食品ロス対策なども交えた戦略の策定が行われています。
愛知県豊田市では、2020年10月に「ゼロカーボンシティ宣言」を行いました。具体的な施策として「とよたゼロカーボンバンク」、「とよた・ゼロカーボンアクション」を実施しています。
例えば、家庭用燃料電池システムを個人宅へ設置し、CO2排出削減量を市でクレジット化して企業へ売却することで、さらにCO2削減事業を進めるなど、行政と地元企業、市民が一丸となり取り組んでいます。
神奈川県横浜市では、2018年10月に「Zero Carbon Yokohama」を宣言しています。横浜市のみならず東北地方の13市町村と連携を行い、広域連携による地域循環共生圏の形成に力を入れているのが特徴です。
広域連携のほかにも、省エネ住宅やクリーンエネルギー車の普及に取り組み、各家庭からのCO2排出量を減らす取り組みが行われています。
京都府京都市は、全国に先駆けて2050年CO2排出量正味ゼロを宣言している自治体で、環境省による脱炭素先行地域に選定されています。脱炭素先行地域とは、脱炭素への高いポテンシャルと熱意を持つ地域のことです。
京都市では、「2050京(きょう)からCO2ゼロ条例」という気候変動対策の条例を打ち出し、文化的価値とサステナブルが共存する、京都ならではの価値創造につなげています。
※参考:脱炭素先行地域とは|環境省
兵庫県神戸市は、2020年12月に、「2050年二酸化炭素排出実質ゼロ」を宣言しています。「神戸市地球温暖化防止実行計画」を定め、水素エネルギーの利用、再生可能エネルギーの利用拡大などを中心に、CO2排出量削減に取り組んでいます。また、エコファミリー制度によって公共交通機関の利用を促進していることも特徴です。
山梨県は2009年に、CO2排出ゼロを目指す「CO2ゼロやまなし」を宣言しています。さらに2021年には、県内全市町村共同による「やまなしゼロカーボンシティ宣言」を行いました。その後、山梨県では水素の活用や、土壌表層の炭素量を年間0.4%増量させることで、大気中の二酸化炭素を減らす、「4パーミル・イニシアチブ」に取り組んでいます。
静岡県沼津市では、2024年2月に「ゼロカーボンシティNUMAZU2050」を宣言し、教育・交通によるCO2削減などに取り組んでいます。全国で初めて路線バスとしてEVバスを導入したり、公共の建物へは太陽光発電を積極的に導入したりと、主に教育・交通による取り組みが進められています。
岡山県真庭市では、2020年3月に「ゼロカーボンシティまにわ」を宣言しています。主な取り組み事業としては、焼却ごみの削減を図りつつ「真庭バイオマス産業杜市」を目指す、バイオマス発電事業、EVステーションの設置の促進などです。エコカーや自転車を活用した交通網の構築など、森の多い地域資源を保存・活用するまちづくりが行われています。
2050年までの温室効果ガス抑制を目標としたパリ宣言にあわせ、現在は日本でも多くの企業や自治体が脱炭素の宣言を行っています。同時にさまざまな施策が打ち出されていますが、これらの目標は人や企業がそれぞれの生活や運用を見直さなければ、実現が難しいでしょう。
今日からでも脱炭素の取り組みを始めたい場合は、脱炭素のノウハウが集まるWebサイト「ゼロ炭素ポート」で、取り組みのヒントを探してみてはいかがでしょうか。企業として実施できる脱炭素の取り組みをしっかりと見つけられます。必要に応じて、エネルギー施策を支えるソリューションをご相談いただくことも可能です。まずはお気軽にお問い合わせください。
会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA