ゼロ炭素ポート

脱炭素ドミノとは?地域脱炭素ロードマップの全体像や地域の取り組み例など紹介 

作成者: 大塚勝臣(おおつかかつおみ)|2024年11月21日

環境負荷の少ない持続可能な社会の実現に向け、脱炭素ドミノが進行中です。脱炭素ドミノとは、特定の地域で効果が見られた施策を地域や国境を越えて連鎖させ、脱炭素社会を築いていく取り組みです。 

本記事では、脱炭素ドミノについて、考案された背景や脱炭素ロードマップに触れつつ解説します。具体的な取り組みも紹介するので、ぜひ参考にしてください。

脱炭素ドミノの基本

脱炭素ドミノは、特定の地域で脱炭素化の取り組みを集中的に展開し、成功モデルやノウハウを段階的に周辺地域へと波及させていく戦略です。すべての地域が一斉に脱炭素化を進めることは容易ではありません。そのため、先行地域での実績をもとに、効率的かつ実践的な形で脱炭素化を広げていくことが期待されています。 

※参考:地域脱炭素とは|環境省 

【先行的なモデル地域】脱炭素先行地域とは?

脱炭素先行地域は、環境負荷軽減に向けた高い可能性と意欲を備えた地域を指します。脱炭素先行地域に選定されるためには、地域固有の資源や特徴を活用した、実効性のある計画が必要です。2050年カーボンニュートラル達成への道筋を示すため、脱炭素先行地域には2030年度までに「地域内の民生部門の電力消費に伴うCO2排出実質ゼロ」の実現が求められています。 

※参考:脱炭素先行地域とは|環境省 

脱炭素ドミノが考案された背景 

2015年のパリ協定採択を機に、温室効果ガスの削減は、国際社会の重要課題として認識されるようになりました。日本も、2050年カーボンニュートラルという目標を掲げていますが、各地域の脱炭素化への対応には大きな差があります。 

脱炭素ドミノは、環境対策の地域差をきっかけに生まれた取り組みです。一部の地域を脱炭素先行地域として選定し、成功モデルを順次他の地域へと広げていくことで、国内全体の効率的な脱炭素化を目指しています。 

※参考:脱炭素先行地域とは|環境省 

※参考:2020年以降の枠組み:パリ協定|外務省 

政府が掲げる地域脱炭素ロードマップとは?

2021年6月、国は「地域脱炭素ロードマップ ~地方からはじまる、次の時代への移行戦略~」を打ち出しました。 

地域脱炭素ロードマップは、2050年カーボンニュートラルの達成に向けて、地域レベルでどのように脱炭素化を進めていくべきかを示した行動計画です。地方の特性を活かしながら脱炭素社会への転換を目指す指針として、地域脱炭素ロードマップは位置づけられています。 

※参考:地域脱炭素ロードマップ【概要】|内閣官房ホームページ 

地域脱炭素ロードマップの目指すもの 

地域脱炭素ロードマップは、2050年を待たずに、カーボンニュートラルを実現することを目標としています。地域脱炭素ロードマップでは、まず脱炭素先行地域を選定し、その取り組みで得られた成功モデルを他の地域へと展開していく、2段階方式を採用しています。成功モデルを横展開させるプロセスこそが、脱炭素ドミノと呼ばれる仕組みの本質です。 

※参考:地域脱炭素ロードマップ【概要】|内閣官房ホームページ 

地域脱炭素ロードマップの全体像 

地域脱炭素ロードマップの全体像を、脱炭素先行地域の選定や重点対策、基盤的施策に触れつつ解説します。 

脱炭素先行地域の選定 

脱炭素先行地域の目標は、家庭や第三次産業の電力消費に伴うCO2排出実質ゼロを実現することです。脱炭素先行地域の取り組み基準は、以下の7つです。 

・再エネポテンシャルの最大活用による追加導入 
・住宅・建築物の省エネ及び再エネ導入及び蓄電池等として活用可能なEV/PHEV/FCV活用 
・再生可能エネルギー熱や未利用熱、カーボンニュートラル燃料の利用 
・地域特性に応じたデジタル技術も活用した脱炭素化の取組 
・資源循環の高度化(循環経済への移行) 
・CO2排出実質ゼロの電気・熱・燃料の融通 
・地域の自然資源等を生かした吸収源対策等 

また、脱炭素先行地域の範囲の類型は、住生活エリア、ビジネス・商業エリア、自然エリア、施設群に分けられます。 

※引用:地域脱炭素ロードマップ【概要】|内閣官房ホームページ 

重点対策の実行

地域脱炭素ロードマップで掲げられた重点対策は、以下のとおりです。 

・屋根置きなど自家消費型の太陽光発電 
・地域共生・地域裨益型再エネの立地 
・公共施設など業務ビル等における徹底した省エネと再エネ電気調達と更新や改修時のZEB化誘導 
・住宅・建築物の省エネ性能等の向上 
・ゼロカーボン・ドライブ(再エネ電気×EV/PHEV/FCV) 
・資源循環の高度化を通じた循環経済への移行 
・コンパクト・プラス・ネットワーク等による脱炭素型まちづくり 
・食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立 

エネルギーの効率的な活用から、まちづくり、農林水産業まで、地域の暮らしを支えるさまざまな分野での取り組みが示されています。 

※引用:地域脱炭素ロードマップ【概要】|内閣官房ホームページ 

基盤的施策の実行

地域脱炭素ロードマップで示された基盤的施策は、以下の3つです。 

・地域の実施体制構築と国の積極支援のメカニズム構築 
・グリーン×デジタルによるライフスタイルイノベーション 
・社会全体を脱炭素に向けるルールのイノベーション 

基盤的施策では、国が地域の主体的な脱炭素化を支援する体制を整えることが明示されました。また、デジタル技術を活用した新たなライフスタイルの創出や、脱炭素社会の実現に向けた制度の整備についても掲げられています。 

※引用:地域脱炭素ロードマップ【概要】|内閣官房ホームページ 

脱炭素先行地域の選定目標と現状

政府は、「2025年までに少なくとも全国から100か所以上の脱炭素先行地域を選定する」という目標を掲げています。脱炭素先行地域の選定は着実に進展しており、2024年9月27日時点での選定地域は、全国38道府県にまたがる108市町村から提案された82件に達しました。 

※参考:脱炭素先行地域|環境省 

脱炭素先行地域に選ばれるメリット

脱炭素先行地域に選定されるメリットを、地域経済活性化への期待と、国からの手厚い支援について解説します。 

地域経済の活性化

脱炭素化への取り組みは、地域経済を活性化させる機会となります。環境技術関連の産業が誕生すると、新たな雇用創出が期待できるためです。また、多くの地域では、都市部への人口流出が課題となっています。脱炭素化の取り組みを通じた魅力向上により、過疎化した地域が賑わいを取り戻せる可能性も広がります。 

各府省庁からの支援

脱炭素先行地域には、環境省が運営する地域脱炭素移行・再エネ推進交付金をはじめとして、さまざまな支援が用意されています。各府省庁から提供される支援策を効果的に活用すると、地域の脱炭素化を加速できます。 

※参考:地域脱炭素推進交付金|環境省 

脱炭素を推進する制度

地域脱炭素移行・再エネ推進交付金以外の主な支援制度を、以下に示しました。 

・デジタル田園都市国家構想交付金(地方創生推進タイプSociety5.0型) 
・ローカル10,000プロジェクト 
・エコスクール・プラス 
・サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型) 
・水力発電導入加速化事業 

脱炭素先行地域の取り組みを後押しするため、幅広い分野で支援制度が用意されています。 

※参考:デジタル田園都市国家構想交付金(地方創生推進タイプSociety5.0型)|内閣府地方創生推進事務局 
※参考:ローカル10,000プロジェクト -地域密着型の起業や新規事業を支援します!|総務省 
※参考:エコスクール・プラス|文部科学省 
※参考:サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)|国立研究開発法人 建築研究所 

※参考:事業性評価事業|一般財団法人 新エネルギー財団 水力関連補助事業 

脱炭素先行地域の取り組み例 

ここでは、脱炭素先行地域の取り組みについて、太陽光発電と電気自動車関連の事例を紹介します。 

【兵庫県伊丹市】自家消費型の太陽光発電の普及促進

兵庫県伊丹市では、事業所への太陽光発電設備の導入を推進するため、エネルギー関連企業との協力体制を確立しました。同一電力会社エリア内にて共同調達の仕組みを取り入れ、費用を抑えつつ制度を運営しています。また、PPAやリースに加えて購入にも応じることで、幅広い層の需要に対応できる制度を整えています。 

【島根県美郷町】電気自動車(EV)を活用した地域課題の解決 

根県美郷町では、燃料費削減と地域防災力向上を両立する目的で、電気自動車(EV・PHV)の活用に取り組んでいます。 

災害多発地域であるこのエリアは、避難施設への非常用電源整備が課題でした。しかし、予算的制約もあり、太陽光発電設備などの設置は難しい状況でした。美郷町は、個人や事業者向けに電気自動車購入の補助制度を設け、自治会を通じて住民への周知を進めています。 

環境省が推進する都市間連携事業の取り組み例 

都市間連携事業は、日本の自治体と海外の都市が連携して、脱炭素化に取り組むプロジェクトです。このプロジェクトには、脱炭素ドミノを国際的に展開し、途上国・新興国の脱炭素化を促進する役割があります。以下では、都市間連携事業の具体的な事例を紹介します。 

※参考:都市間連携事業|環境省 

【札幌市とウランバートル市】省エネ技術の普及促進 

寒冷地ならではの都市開発ノウハウを持つ札幌市は、モンゴルの首都ウランバートル市と協力し、環境配慮型の街づくりを進めています。 

例えば、建築分野において、札幌市の都市政策や省エネ住宅の実績に関する共有がなされました。建物の断熱性能評価やエネルギー効率の計算方法などの技術提供を行い、ウランバートルの気候条件に適した、低炭素型建築の設計指針をまとめる取り組みを展開しています。 

【大阪市とフィリピン共和国ケソン市】脱炭素都市形成に向けた取り組み 

大阪市とフィリピン共和国のケソン市は、2018年から環境分野での都市間協力を本格化させています。大阪市が培ってきた環境技術や施策のノウハウを活かし、ケソン市の脱炭素化を支援する形で取り組みが進行中です。 

具体的な取り組みとしては、市内を走るバスの電動化推進や、公共施設へのLED照明導入といった省エネ対策について、技術的なアドバイスや導入支援などがなされています。 

脱炭素ドミノの課題 

脱炭素ドミノを成功させるには、克服すべき課題があります。ここでは、脱炭素ドミノの課題を解説します。 

国・企業・個人が一体となった取り組み 

国や地方は、脱炭素を通じて新たに成長できるチャンスを得られる可能性があります。しかし、脱炭素を実現させるには、行政の支援だけではなく、企業活動や家庭における積極的な協力が不可欠です。社会全体で、脱炭素に取り組む姿勢が求められています。 

最新技術の開発と普及 

脱炭素社会の実現には、再生可能エネルギーやカーボンリサイクルといった、革新的な技術の確立が望まれます。技術開発に挑む企業は、環境負荷の低減に貢献できるうえに、新たな事業展開のチャンスも得られるでしょう。最新技術の開発と普及により、環境と経済が共に発展していくことが期待されています。 

まとめ

脱炭素ドミノとは、特定の地域で脱炭素化の取り組みを集中的に展開し、成功モデルを横展開する戦略のことです。地域脱炭素ロードマップには脱炭素ドミノの戦略が詳細に記され、脱炭素先行地域にて地域特有の取り組みが進行中です。 

「ゼロ炭素ポート」は、自社のサービスだけではなく他社のソリューションも含めて、お客さまの脱炭素への取り組みを総合的にサポートするWebサイトです。脱炭素に向けた取り組みをお考えの人は、ぜひゼロ炭素ポートをご活用ください。 

執筆者プロフィール

会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA