近年、脱炭素社会を目指し、政府も施策を打っています。脱炭素を実現するために、一体どのような取り組みが行われているのでしょうか。
本記事では、国が示している方針やロードマップなどについて解説します。脱炭素社会の実現に向けた国の施策について詳しく知りたい人は、ぜひ参考にしてください。
「脱炭素」とは、地球温暖化を引き起こす要因となっている、二酸化炭素の排出量をゼロに近づけることを目指す取り組みのことです。また、二酸化炭素排出が実質ゼロになった社会を、「脱炭素社会」と呼びます。
脱炭素が進められる背景には、温暖化による気候変動や資源枯渇のリスクが挙げられます。産業革命以降、二酸化炭素が大量に放出されており、気候変動や資源の枯渇を引き起こす要因となってきました。温暖化が進行すれば、多くの人の生活にも大きな影響を及ぼすと考えられています。
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量のバランスを取り、実質的な排出量をゼロにする取り組みです。温室効果ガスを減らし、気候変動への影響を抑えることを目指しています。
カーボンニュートラルでは、排出量を削減するだけではなく、排出された温室効果ガスの回収にも取り組みます。また、脱炭素の考え方とは少し異なり、二酸化炭素だけではなくメタンやフロンガスなどの温室効果ガスも対象です。
日本は、2050年までに温室効果ガス排出の実質ゼロを達成することを目標に、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを進めています。また、2050年の実現を見据えた2030年の目標として、2013年度比で温室効果ガスの46%削減を掲げ、そのうえで50%削減も目指しています。
他の国が掲げている目標は、以下のとおりです。
| 国名 | カーボンニュートラル実現の目標 | 2030年の目標 | 政策例 |
| アメリカ | 2050年 | -50~-52% (2005年比) |
インフラ・クリーンエネルギー投資 |
| EU | 2050年 | -55%以上 (1990年比) |
欧州グリーンディールの策定 |
| 中国 | 2060年 | -65%以上 (2005年比) |
国家気候変動適応戦略 |
| ロシア | 2060年 | -70% (1990年比) |
長期エネルギー戦略 |
2050年カーボンニュートラルの目標を達成するための施策として、日本政府は「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を掲げています。ここでは、その概要について解説します。
2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略は、経済と環境が相互に成長を促していく好循環をつくる政策です。政府はこの戦略に基づき、企業がカーボンニュートラルに向けて前向きに取り組みやすい環境を整えています。
カーボンニュートラルへの投資を促進させる税制の策定といった支援によって、企業が挑戦しやすくしています。
2050年に向けて成長が期待されている分野として、エネルギーに関連する産業や、輸送と製造に関連する産業、家庭・オフィスに関連する産業から14の分野が挙げられています。それぞれの分野は、以下のとおりです。
【エネルギー関連産業】
・洋上風力、太陽光、地熱
・水素・燃料アンモニア
・次世代熱エネルギー
・原子力
【輸送・製造関連産業】
・自動車、蓄電池
・半導体、情報通信
・船舶
・物流、人流、土木インフラ
・食料・農林水産業
・航空機
・カーボンリサイクル・マテリアル
【家庭・オフィス関連産業】
・住宅、建築物、次世代電力マネジメント
・資源循環関連
・ライフスタイル関連
政府は、グリーン成長戦略のなかで企業の挑戦をサポートする8つの政策を打っています。それぞれの政策は、以下のとおりです。
・予算:グリーンイノベーション基金の実施
・税制:カーボンニュートラル投資促進税制の策定
・金融:分野別にロードマップを設定
・規制改革、標準化:新技術に対応した規制改革を実施
・国際連携:日米・日EU間の技術協力
・大学での取り組みの推進など:大学での人材育成
・2025年日本国際博覧会:イノベーション技術を実証する場を用意
・若手ワーキンググループ:若い世代からの提言の場を用意
地域脱炭素ロードマップは、地域ごとの特性や資源を活用し、脱炭素に向けた2030年までの施策を地域ごとにまとめたものです。2021年6月、国・地方脱炭素実現会議によって取りまとめられ、少なくとも100か所の「脱炭素先行地域」を創出することが目標とされています。
このロードマップにより、脱炭素を地域の成長戦略にし、温室効果ガスの排出量を削減することを目指しています。
ここでは、地域脱炭素ロードマップの構成内容について解説します。
地域脱炭素ロードマップの第1ステップは、全国に少なくとも100か所の「脱炭素先行地域」を設けることです。これらの地域では、それぞれの地域の特性に応じて、脱炭素を実現するための取り組みを進めます。各地域で設定された削減レベルの要件を満たすことで、具体的な脱炭素の成果を示せます。
削減レベルの要件は、以下のとおりです。
・地域と暮らしに関連する事柄の温室効果ガスの削減に取り組む
・民生部門の電力消費に伴う二酸化炭素排出量の実質ゼロを実現する
・そのほかの温室効果ガス排出削減について、国の2030年度目標と整合する削減を地域特性に応じて実現する
・上記を実現する道筋を、2025年度までに立てる
第2ステップは、脱炭素の重点対策を全国規模で展開することが目的です。具体的には、自家消費型の太陽光発電の設置や、住宅・建築物の省エネ性能向上などの対策です。すでに全国のさまざまな場所で、地方創生を目的とした地域脱炭素に関わる取り組みが始まっています。
脱炭素先行地域では、一体どのような取り組みが行われているのでしょうか。ここでは、脱炭素先行地域の例を紹介します。
名古屋市は、再開発地区で脱炭素の実現を図っている地域です。低炭素モデル地区に設定されている「みなとアクルス」において、以下の取り組みを行っています。
・太陽光システムや小型風力発電システム、カーボンニュートラルな都市ガス発電、蓄電池の導入
・市所有の既存太陽光発電およびごみ発電の余剰電力供給
など
これにより、この地区が脱炭素コンパクトシティのモデルになることを目指しています。
尼崎市は、官民連携でゼロカーボンベースボールパークの整備を進めています。スポーツ施設に太陽光発電システムや蓄電池を導入し、ごみ発電の余剰電力も活用します。
この取り組みでは、小田南公園内の阪神タイガース野球場だけではなく、大物川緑地や近隣の阪神電車の駅も、脱炭素化の対象です。二酸化炭素排出量実質ゼロを目指し、集客と環境貢献の同時実現を目標としています。
脱炭素社会の実現に向けて、政府や各地域でロードマップが設定され、その実現のためにさまざまな取り組みが行われています。
もし脱炭素に向けた取り組みを自社でも行いたいなら、ぜひ「ゼロ炭素ポート」をご活用ください。具体的な取り組みの1つとして、二酸化炭素排出量を計算できるツールを提供しています。ツールの活用により、企業の二酸化炭素排出量を具体的に把握し、効果的な削減戦略を立案可能です。
初めて脱炭素経営に取り組む企業のサポートを行っているため、ぜひお問い合わせください。
会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA