ゼロ炭素ポート

Scopeについて解説!CO2排出量の計算方法を知ろう

作成者: 高牟礼昇|2023年12月20日

執筆者プロフィール

高牟礼昇

Noboru Takamure

オーストラリア最古の大学であるシドニー大学のSchool of Physicsで研究員として勤務し、ガラスや次世代太陽電池と言われているペロブスカイト太陽電池、水素の電気分解などカーボンニュートラルに関係する分野の研究を行う。現在はシドニー大学の客員研究員として研究を行う傍ら、山梨県で研究開発サービスを行う株式会社マッケンジー研究所を設立し研究開発サービス及び脱炭素コンサルティングなどを行っている。

脱炭素経営実現には「知る」・「測る」・「減らす」という3つのステップがあります。最初のステップである脱炭素経営について知った後は、実際に温室効果ガスの排出量を測る必要があります。本記事ではCO2排出量を測ることについて解説すると共に、ゼロ炭素ポート内常設の計算ツールの使い方についても説明します。

1. 自社のCO2排出量を知るには?

日本では2020年に行われたカーボンニュートラル宣言により2050年にカーボンニュートラルを達成することが日本政府の目標になり、企業によるCO2排出量の削減の流れが生まれています。CO2排出量の算出は自社からの排出のみではなく、サプライチェーン全体の排出を排出源により、「Scope」と呼ばれる区分ごとに分けて算出することが多くなっています。この算出方法は、排出量の算定・報告のために作られたGHGプロトコルという国際的な基準に基づいています。

Scopeについて

サプライチェーン全体の排出量の計算はGHGプロトコルですでに形式化しており、排出ごとに自社による直接排出(Scope 1)間接排出(Scope 2)サプライチェーンにおける他社からの排出(Scope 3)に分けられ、それぞれ排出の対象が定められています。

GHGプロトコルは、サプライチェーン全体の排出量の削減を行いますので、関連企業が排出の削減目標を掲げると自社も影響を受けて削減目標を受け入れ、共有する必要が出てきます。もし、関連企業の削減目標を受け入れられない場合は、今後の取引に影響する可能性もあります。

このように、Scopeで排出量を算出しサプライチェーン全体の削減目標を定めることにより、企業の削減活動で関連企業へ影響を与えることができ、全体として温室効果ガスの効果的な削減に繋がることができます。

ここからは3つの区分それぞれについて解説していきます。

Scope 1

Scope 1は自社における温室効果ガスの直接排出を指しています。例えばガソリンや都市ガス、灯油など化石燃料の燃焼によるエネルギー起源のCO2排出が該当します。また、鉄鋼やセメント製造など、化石燃料の燃焼ではなく製造プロセスで排出される、非エネルギー起源のCO2排出も含まれています。

Scope 1の排出には、CO2のみではなく7種類の温室効果ガス全てを含んでいますが、CO2の排出の割合が非常に多いので、CO2のみの排出に限定して使用されるケースが多いです。また、それぞれの温室効果ガスには固有の地球温暖化係数があり、この係数を使用することでCO2の排出量に換算することも可能です。このため、厳密にはCO2換算排出量と表記する必要があります。

Scope 2

Scope 2は自社におけるエネルギー起源の間接排出を意味し、具体的には他社から供給された電気水蒸気の排出を指しています。例えば、電気を使用した場合はその電気を発電した際に排出されたCO2の量がこのScope 2に当たります。

電気は発電方法によりCO2の排出量が異なります。このため、電力会社や電力プランによってはCO2の排出量が異なっています。この発電の際の排出量は排出原単位により知ることができます。(排出原単位については、「2. 基礎的な計算方法&必要条件」にて説明します。)

これらScope 1とScope 2を足すと自社によるCO2排出量となります。

Scope 3

Scope 3はその他の間接排出のことを指しており、サプライチェーン全体を包括しています。Scope 3はその内容により上流および下流、さらには15のカテゴリに細かく分けられています。

これらのカテゴリからの排出量を正確に計算する際には、サプライチェーンを構成するそれぞれの企業から排出量の報告を受ける必要があります。しかし、今のところ製品や活動ごとに排出されたCO2の排出量を報告している企業は少ないため、正確な計算は簡単ではありません。

一方で、排出原単位を用いることで大まかに計算する方法もありますが、排出原単位を用いた場合の計算の精度は低いため、今後はサプライチェーン排出量の詳細な計算のため、CO2排出量を報告する企業は増えてくることが推測されます。

出典:環境省 グリーン・バリューチェーンプラットフォーム|脱炭素経営ガイド|企業向け資料(https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/guide.html#no00)ページ内「SBT等の達成に向けたGHG排出削減計画策定ガイドブック 2022年度版」をもとに編集し、加工して作成。

(2023年12月14日時点)

CO2排出量を知るメリット

脱炭素の広がりに伴い、企業のCO2排出量の削減計画やCO2排出量の報告が徐々に増えています。このためサプライチェーン排出量を算出すると共に、この先関連企業へCO2排出量を報告する必要性がさらに高まることが考えられます。

さらに、今後はカーボンプライシングが本格化するなど、CO2排出に価格付けされることが予想され、社会のシステムが変更されると共に「環境に優しく低炭素である」という新しい価値の創出が本格化していきます。

この流れの中、気候変動対策を取り入れつつ利益を追求する、「脱炭素経営」が注目されています。排出量の計算はこの脱炭素経営を始める第一歩となります。

2. 基礎的な計算方法&必要条件

CO2排出量の計算は必要な情報さえわかっていれば、かけ算することで簡単に実践できますが、この情報を集めることは容易ではありません。特にScope 3は他社からのCO2排出量の報告が必要であるため、サプライチェーンが大きくなるにつれて調査する情報量が多くなり情報収集が難しくなります。ここでは、Scope 1から3までに共通するCO2排出量の基本的な計算方法を説明します。

活動量×排出原単位=CO2排出量

CO2排出量の計算の基本は活動量×排出原単位です。CO2排出量の計算はこの活動量と原単位に基づいており、これらの数字を集めることでCO2排出量を算出することができます。ただし、活動量を意図的に収集し整理しておかないと、計算時に正確な数字を得ることができません。このため、今後はサプライチェーン排出の計算に必要な数字をまとめておく必要があります。

活動量・排出原単位って何?

ここからは活動量排出原単位について説明します。活動量とは事業者の活動で発生する規模を指し、時間や重さ、体積、金額などの量を指しています。例えば、3時間活動した場合の活動量は3時間で、輸送の際に消費したガソリン量が10Lであればこの時の活動量は10Lとなります。

一方、排出原単位は、単位活動量当たりのCO2排出量を指しています。この原単位は指標となる活動量の単位ごとに異なる数字が存在します。例えばガソリンは体積である(L)でカウントする場合が多いですが、購入金額(円)や重さ(kg・t)でもカウントすることができます。つまり単一の品目の排出量を求める場合であっても、体積、金額、重さといった活動量の単位ごとに原単位が存在している可能性があります。ですから、単位の異なる原単位がある場合は、適切なものを選択して使用しなければなりません。

排出原単位は多種多様

先述の通り、排出原単位は同じ品目でも様々ですが、製造工程や活動ごとにも存在しますので、非常に多くの種類の原単位の中から適切なものを選択する必要があります。この原単位の計算は専門的な知識が必要であるため、専門の機関により算出されています。日本ではサステナブル経営推進機構により広範囲の原単位が計算されており、LCIデータベースであるIDEAに詳細な計算結果が掲載されています。ただしIDEAの計算結果を利用する場合はライセンスの取得が必要となりますので、使用には十分な注意が必要です。

参考:一般社団法人サステナブル経営推進機構「LCIデータベースIDEA」

https://sumpo.or.jp/consulting/lca/idea/

3. 複雑な「Scope 3」への対応

これまで見てきた通り、Scope 1・2は自社の直接・間接排出を示しているため、自社で管理している活動量を把握できれば簡単にCO2排出量を算出することができます。ですが、Scope 3は自社以外の排出、つまりサプライチェーン排出を示すため、サプライチェーンを構成する企業の協力が必要になります。またScope 3は15のカテゴリから構成されているので、それぞれを計算するためには製品を購入した場合や輸送を行った場合など、その製品の製造や輸送の際に排出されたCO2量を知る必要があります。そのため、正確な排出量の集計には関連企業から報告が必要です。また正確に算出するには困難が伴い、多くの時間を要します。

ここでは、そんなScope 3の計算方法や算出する必要性について事例を用いて紹介します。

サプライチェーンの排出量を知る必要性

自社の排出のみではなく、サプライチェーン全体の排出を知ることは、自社のみではなく他社を巻き込んだ排出削減に繋がるため、全体の削減に向けたモチベーションを引き出すというメリットがあり、脱炭素を効果的に進める手段としても有効です。またScope 3は自社以外のサプライチェーン全体の排出を示すため、様々な業種でこのScope 3からの排出が最も多くなるケースがほとんどです。そのため、サプライチェーンの排出量を正確に認識する必要があります。


サプライチェーン上流の各カテゴリの相関図


サプライチェーン下流の各カテゴリの相関図

さらに近年の脱炭素経営の広まりを受け、ESG経営を行う企業への投資(ESG投資)が盛んになっており、環境への貢献や改善意識の高い企業への投資が積極的に行われるようになっています。また消費者からも同様に、環境意識の高い企業への注目度は高まっており、Scope 3の算出はこうした投資家・消費者からの恩恵を受けられるチャンスにもつながります。

排出原単位 or 一次データ、どちらが望ましい?

Scope 3の排出量は基本的にサプライチェーンを構成する企業からの報告である一次データを利用して計算することが望ましいとされています。もちろん、必要な排出原単位があれば一次データの報告を受けなくても排出量の概算はできますが、正確な排出量は算出できません。そのため、正確な排出量の提供を求める関連企業からの要求に対応することが難しくなります。

また一次データで算出した場合のメリットもあります。例えば、企業努力により低炭素の製品を作った場合、新しい排出量を一次データとして販売先に提供することで、仕入れ先の企業の評価も上がります。販売先の企業は低炭素の製品を仕入れることでサプライチェーン排出量を下げることができるからです。さらに、低炭素という付加価値に惹きつけられた他の企業が新たな販売先となることも期待できるので、低炭素の製品を作ることでマーケットを拡大できる可能性が高まります。

このように、サプライチェーン排出量の算出では一次データを使用することが望ましく、正確な排出量を計算するとビジネスチャンスに繋がる可能性があります。

Scope 3の計算事例

Scope 3の計算はScope 1・2と同じく、活動量×排出原単位により計算できます。ここでは実際にScope 3の排出量を計算してみます。最も正確に算出できるのはガソリンなどの化石燃料の燃焼によって排出されたCO2量です。ガソリンに含まれている炭素が二酸化炭素になるため、ガソリンの重さや体積がわかると正確な排出量を計算できます。ガソリンの原単位は2.32tCO2/klです。例えば、ガソリン100L(=0.1kl)を使用した場合、以下の計算の通り232kgのCO2が排出されます。この計算はScope 1でも使用します。

2.32tCO2/kl×0.1kl=0.232tCO2

出典:環境省 温室効果ガス算定・報告・公表制度|制度概要資料(https://ghg-santeikohyo.env.go.jp/about/document)ページ内「「令和元年度算定・報告・公表制度説明会」資料分割版|(参考1)算定方法・排出係数一覧」を参照。

(2023年12月14日時点)

電気の使用による排出は電気の排出原単位と使用した電力量を用いて計算します。電気の排出原単位は各電力会社により公表されていますので、自社が所在する電力会社の原単位を使用します。環境省によると令和4年度の東京電力の排出係数は0.457kg-CO2/kWhでした。この排出係数を利用すると、東京電力の供給する電力を1000kWh使用した場合は、457kgのCO2を排出したことになります。この計算はScope 2でも使用します。

0.457kgCO2/kWh×1000kWh=457kgCO2

出典:環境省 温室効果ガス 算定・報告・公表制度|算定方法・排出係数一覧(https://ghg-santeikohyo.env.go.jp/calc)ページ内「電気事業者別排出係数一覧」を参照。

(2023年12月14日時点)

そのほか、金額当たり原単位を使用すれば、非常に簡単にCO2排出量が算出できます。金額は最も正確に処理される数字であり、経理情報から容易に把握可能です。例えば任意の年度にサプライチェーンが製造した砂糖100万円分を購入した際、購入した砂糖の製造時に排出されたCO2量が5.22tであったと仮定とします。この時の原単位は5.22t-CO2/100万円となります。ですので、次年度の購入金額が1000万円であった場合、CO2排出量は以下の通り52.2tとなります。

5.22tCO2/100万円×1000万円=52.2tCO2

出典:産業連関表による環境負荷原単位データブック(3EID)|データファイル詳細(https://www.cger.nies.go.jp/publications/report/d031/jpn/datafile/embodied/2015/390.html)ページ内「1.温室効果ガス国家インベントリと一致(外洋輸送部門による国外排出量を含まず)|簡易版」を参照。

(2023年12月14日時点)

しかし、この計算は非常に簡単な反面、詳細な排出内訳はわからず、排出量も正確ではありません。あくまで一般的な値が出るだけですので、排出量の実態を知ることには繋がりにくいことに留意しましょう。

4.ゼロ炭素ポートの常設計算ツール

ゼロ炭素ポートでは、CO2排出量算出の足がかりとなる排出量を概算できる計算ツールを常設しています。複雑なScope 3の計算を行う前に、より簡単に計算できるScope 1および2の排出量を算出して自社の排出量を知ることがサプライチェーン全体の排出量を測る第一歩になりますので、まずはScope 1および2の排出量の計算をしてみましょう。

ゼロ炭素ポートの計算ツール利用法

ゼロ炭素ポートの計算ツールにはすでに排出原単位が用意されていますので、活動量を打ち込むだけでScope 1・2の排出量の計算ができます。Scope 1は石炭(原料炭・一般炭・コークス)、ガソリン、ガス(天然ガス・都市ガス)など、品目ごとに排出原単位が表示されます。またScope 2についても、電力会社ごとの排出原単位を選択することが可能です。このツールを利用することで、CO2排出量の計算に慣れることができますので、ぜひ利用してみてください。

計算ツールはこちら

実際に計算ツールを利用してみよう

では実際に計算ツールを利用してみましょう。ゼロ炭素ポートでは、Scope 1、Scope 2の2種類の計算ツールを用意しています。まずはScope 1の計算ツールの利用方法から説明します。

Scope 1の計算ツールの「項目」欄より、CO2排出量を算出したい任意の項目を選択します。

項目を選択すると、「活動量(使用量)」欄右横の使用量単位と「排出係数(排出原単位)」が自動的に反映されます。仮にガソリンのCO2排出量を算出したい場合は、項目を「ガソリン」にすると、使用量単位は「kl」、排出係数(排出原単位)は「2.32」となります。

使用量単位に合わせて活動量を集計し、その結果を「活動量(使用量)」欄に入力すれば、自動的にCO2排出量が算出できます。仮に活動量を110klとすると、「活動量(使用量)」欄に「110」と入力するだけです。CO2排出量の合計は「255.2tCO2」と表示されました。

その他の項目も合わせて計算したい場合は、行を追加することも可能です。「項目」欄下の「項目を追加する」ボタンを押すと、新たに行が表示されます。続けて、新しい行で算出したい「項目」を選択し、使用量単位に合わせて「活動量(使用量)」を入力してください。行を追加していくごとに、各行のCO2排出量を合計したCO2排出量を算出することができます。

Scope 2の計算ツールの利用方法も、Scope 1の計算ツールと同様です。「項目」欄から任意の電力会社を選択し、「活動量(使用量)」(kWh)を入力するとCO2排出量を算出することができます。

このように、簡単にScope 1・2のCO2排出量を概算できますので、「自社のCO2排出量を算出したことがない」「これからCO2排出量を算出しなければならない」という事業者の方は、ぜひ一度活用してみてください。

5. まとめ

今回の記事ではCO2排出量の計算に必要な要素や、それぞれのScopeの計算方法を説明してきました。今後は業界別のCO2排出傾向を分析した記事や、様々な企業の脱炭素の取り組みを取材した記事などを掲載していく予定ですので、是非ともご期待ください。

執筆者:高牟礼昇