株式会社ヒナタオエナジー(以下:ヒナタオエナジー)は、「2050年CO2ネット・ゼロ」実現に向け様々な事業活動を通して脱炭素社会への移行をリードする東京ガスグループから、環境にやさしく持続可能な社会実現を目指す、新たなエネルギーブランドとして2019年に誕生しました。
主力製品である「ヒナタオソーラー」は、企業向けPPAモデルの太陽光発電サービスです。初期費用0円、メンテナンス費不要、一般的に太陽光の導入が難しい場所でも設置に対応できるなど、脱炭素経営を目指す企業のニーズに応えたサービスを提供しています。ヒナタオソーラーの特徴や強み、導入企業から届く声などを、同社の来村俊郎 代表取締役社長に聞きました。
──貴社のヒナタオソーラーとは、どのようなサービスなのか教えてください。
株式会社ヒナタオエナジー 代表取締役社長 来村俊郎(以下、ヒナタオエナジー来村):ヒナタオソーラーは、お客様が所有する建物の屋根に設置して太陽光発電を実施する、オンサイトPPAモデルの太陽光発電サービスです。お客様の屋根に設置する太陽光パネルは、ヒナタオソーラーが所有し、設置費用や設置後の運用、定期点検や故障対応といった管理に至るまで、すべて弊社が負担しますので、お客様は初期費用0円で太陽光発電をスタートできます。
最近は“0円ソーラー”という言葉を耳にされたことがある方もいるかもしれませんが、PPAモデルのヒナタオソーラーはまさにその1つです。市場においても、脱炭素に向けた企業活動の初動として取り組みやすいサービス、また非常用の電力確保というレジリエンス強化につながるサービスと認知されています。
── なぜ初期費用0円で導入できるのでしょうか?
ヒナタオエナジー来村:導入後、お客様には太陽光で発電した電気のうち、利用された電気の量に応じたサービス料金を月々お支払いいただきます。ヒナタオソーラーの契約期間は20年ですので、その期間を通じて弊社が負担した費用を回収させていただくスキームです。契約期間が満了した後は、太陽光発電設備をお客様に無償譲渡しますので、以降は発電した電気を無料で使えるのも魅力の1つです。
ヒナタオエナジーで導入されているPPAモデルのイメージ。
定期点検費やメンテナンス費はヒナタオエナジーが負担。
── 太陽光発電だけでは電気が不足する場合、もともと契約している電力会社の電気を使えるそうですね。東京ガスグループでも電気の供給はされていますが、ヒナタオソーラーに電気契約の制約がないのはなぜなのでしょうか?
ヒナタオエナジー来村:太陽光発電の導入を検討する企業の足かせになるのではないか、と考えているからです。長年懇意にしている電力会社がいる企業が多く、また電力自由化後、電気の長期契約が増えていることも認識しています。既存の契約を中途で切り替えると違約金など余計なコストがかかる可能性もありますので、私たちが電気契約を制約することで、太陽光発電で脱炭素経営に踏み出す機会を失ってしまう企業もいるかもしれません。
それならば、私たちは太陽光発電のサービスだけを提供する形で、お客様の脱炭素への取り組みのスピードを止めてしまわないようにしたい、と考えています。もちろん東京ガスの電気に切り替えたいご希望があれば、弊社で連携をとって契約いただくことも可能です。
── 東京ガスグループには、ヒナタオソーラーのほかにも太陽光発電を提供する会社、サービスがありますね。
ヒナタオエナジー来村:主に大規模の施設を対象にした太陽光発電事業を手掛ける東京ガスエンジニアリングソリューションズの「ソーラーアドバンス」、家庭を対象にした東京ガスの太陽光発電定額サービス「ずっともソーラー」があります。その中でヒナタオエナジーは、社会課題の解決とともに、既存の2つのサービスの狭間にいらっしゃるお客様、つまり中小企業の皆様の課題解決を重要なミッションの1つとして誕生しました。事業が本格始動する前には、数十社の企業様に対して、太陽光発電の導入にあたってのお困りごと、課題に感じていることなどをヒアリングさせていただきました。
たくさんの企業からお話を伺ううちに、わかったことが大きく2つありました。1つは太陽光発電の導入を検討されている企業の中には「PPAモデルで導入したいのに、設置面積が小さくて断られてしまった」というケースが多いこと。もう1つは、「屋根における耐荷重の制約により、太陽光パネルを載せることができなかった」というケースも多いことです。
── 太陽光を導入したいのにできない、とお悩みの企業がたくさん存在していたのですね。
ヒナタオエナジー来村:はい。現在、PPAモデルを提供するサービスは「数千㎡~」と大規模な設置面積を対象とするものが主流になっています。そのため、広い面積を確保できないがために太陽光発電の導入をあきらめている企業が数多くいます。
また太陽光パネルを設置する屋根には様々な形状があり、強度や耐荷重も違います。形状によっては、現在太陽光パネルとして一般的に流通しているガラスパネルでは載せられない事態が少なからず起こります。私たちが市場を見る限りでは、企業が所有する建物の屋根のうち3〜4割はガラスパネルを載せられない屋根ではないかと考えています。
そこで私たちは、これら2つの課題のソリューションを提供価値としてサービスインできないかと考え、ヒナタオソーラーを現在の形にしてきた経緯があります。
株式会社ヒナタオエナジー 代表取締役社長 来村俊郎さん
── 2つの課題とは「設置面積が小さく設置できないこと」、そして「屋根の形状や耐荷重が合わず設置できないこと」ですね。ヒナタオソーラーは、それらをどのように解決できるのでしょうか?
ヒナタオエナジー来村:まず、ヒナタオソーラーは「150㎡以上」という限られた設置面積に対してもサービスを提供できます。これを実現できるPPA事業者は、私の知るところほぼいないと認識しています。ではなぜ弊社にできるかというと、ビジネス開発段階におけるヒアリングを通し、中小企業の皆様のニーズにも合致するサイズの提供を前提に、組織設計を行ってきたからです。事業開始とともにサービスをスタートできるよう、バックオフィスのDX化などの環境も整備してきました。最初から小さいサイズで提供できるビジネスモデルを想定していたことは、他社と大きく異なる点だと思っています。
また太陽光パネルについては、「薄型軽量パネル」を採用しています。一般的なガラスパネルに比べ非常に軽いことと、弊社独自の施工技術により折板屋根(せっぱんやね)や陸屋根(りくやね)といった、他のPPA事業者が敬遠する形状の屋根を含め、あらゆる屋根に設置が可能です。こちらもヒナタオソーラーならではの強みだと思っています。
弊社のもう一つの強みを挙げると、PPA事業者では珍しく、技術職、研究職の経験を積んだ専門家がそろっており、太陽光パネルの材料や設置方法の開発、品質管理を自社で設計でき、それをPDCAすることができる点です。
「薄型軽量パネル」といっても多くの種類があり、品質も様々です。また、現在日本には太陽光パネルの設置方法について明確なルールはありません。その中で、私たちは設置環境にあわせてどのような材料を、どのように取り付ければ安全で効率的に発電できるのか、という知見を蓄積しています。「お客様に安心してご利用いただけるものを」と、弊社の専門家チームをはじめ東京ガスグループの研究所、大学の研究所などと協力しながら作り上げてきたサービスを提供できることは、他サービスとの差別化になっていると思っています。
ヒナタオソーラーで取り扱いのある「薄型軽量パネル」の特徴。
各企業の設置環境にあわせて、適切なパネルをヒナタオエナジーが提示。
── 中小企業に関わらず、ヒナタオソーラーのニーズは多いのではないでしょうか。
ヒナタオエナジー来村:そうですね。例えば、サステナビリティ推進部署を構えて積極的に脱炭素に取り組む大手企業の中には、すでに太陽光発電を導入していて、太陽光パネルは載せきってしまったと考えている企業が少なくありません。GHG排出量削減の目標を実現するためにもっと何かしたいけれど、もう打つ手がないと悩んでいらっしゃるんですね。
しかし、私たちであれば「まだ、載せられる屋根が残っているかもしれませんよ」という提案ができます。どういうことかというと、3〜4割の屋根はガラスパネルが載せられないとすると、もし10棟の建物を所有している企業の場合、そのうち3〜4棟の屋根に太陽光パネルを増設できる可能性が高いのです。
実際、そうした悩みを抱えるお客様に提案すると「実は設置面積や屋根の耐荷重の関係で載せられなくて……」「この技術とサービスを待っていた」といったお答えをいただくことが多いです。それまで載せきれなかった建物の屋根にヒナタオソーラーの強みを活かした太陽光発電を導入し、少しでも多くのGHG排出量削減につなげたいという声から、ヒナタオソーラーの導入に至った大手企業のお客様も中にはいらっしゃいます。
大手企業の建物や大きな工場だからといって、必ずしも大きな屋根を持っているわけではありません。また他社の太陽光パネルがすでに載っていて、追加で設置したいけれど技術的な問題があり、どこに相談したらよいかわからないという企業もいます。そのような企業の脱炭素化のニーズに対しても、弊社が知見を結集して作り上げた「薄型軽量パネル」や技術力を持って柔軟に対応が可能です。そういった点でも各所から支持をいただいています。
── 20年という長期間の契約になりますから、運用管理やメンテナンスを任せられるかどうかを心配されるお客様が多いのではないでしょうか。
ヒナタオエナジー来村:はい。ビジネス開発段階のヒアリングで太陽光発電を導入済みの企業からお話を伺うと、「維持管理がとても大変だった」「メンテナンス人材の確保が難しく、コストもかかる」といった声が多く聞かれました。太陽光パネルは簡単な構造ではあるものの、精密機械ですのでトラブルが生じる場合もあります。長期間安全に使っていただくためには、定期点検やメンテナンスが欠かせないのですが、それには専門的な知識を持った人材が必要です。現在、自社で設備を買い取って太陽光発電を運用している企業においては、専門家にメンテナンスをアウトソーシングする形が主流となっています。
── 例えば、太陽光パネルにはどのようなトラブルが起こりうるのでしょうか?
ヒナタオエナジー来村:まず、設置初期の段階でパネル自体の不良が少なからず発生します。その場合、自社で太陽光発電設備を買い取って運用している企業は、メーカー側との交渉まで自社で行わなくてはなりません。その際、なぜこの事象が起きたのかといった原因まで調査してメーカーに伝達しなければならないケースが多く、専門的な知識が必要になる場面があります。
また意外と多いのが鳥獣による被害です。例えば、カラスがパネルに石を落として遊んでパネルを割ってしまうことがあります。しかも、新しく取り替えたパネルをあえて狙ってくる頭の良いカラスもいて、メンテナンス費がかさむことが課題となっているというお話も聞きます。電機設備であるため、冬場は比較的暖かく、電気計装設備内にネズミや虫が入り込んでショートさせてしまうこともありますね。
思わぬトラブルに悩む必要がなく、故障対応もメンテナンスもすべておまかせいただきながら太陽光発電を利用できる点は、PPAモデルの大きなメリットです。
── 現在、ヒナタオソーラーを導入されている企業の皆様の規模や業種はどのような傾向なのでしょうか?
ヒナタオエナジー来村:先程もお話した通り、事業開発当初は中小企業の皆様の課題を解決することを念頭に置いていましたが、導入企業の規模は想定以上に幅広くなっており、今は小規模な工場から大手企業のお客様まで広く導入いただいています。また国内はもとより世界的に脱炭素が重要視されるようになり、多くの企業が脱炭素化に取り組んでいるので、業種も様々ですが、中でも、自動車メーカーや部品工場、製紙業、外資系企業からは特に強い意欲を感じます。それ以外の業種でもトップの方を中心に意欲的に脱炭素に取り組まれている企業が多い印象です。
── ヒナタオソーラーに興味を持つ企業の皆様は、どのような課題を解決することを望まれているのでしょうか?
ヒナタオエナジー来村:脱炭素に向けて何かをしなければと使命感を持って相談に来られるケースや、非財務情報開示の潮流を受け、取引先やサプライヤーから脱炭素の取り組みを求められているというケースが多いです。最近では、就活中の学生が就職先を選ぶ際に「企業がどれだけ脱炭素に向けて活動しているか」を重要視しているという話を伺うこともあります。政府や取引先、サプライヤー、そして労働者と、企業の脱炭素化の取り組みに対しては各方面から徐々に要求水準が高まってきていると認識しています。
── 導入の際のお客様とのコミュニケーションにおいては、どのような部分に配慮されていますか?
ヒナタオエナジー来村:太陽光発電の市場においては、電気代を安くするために導入するという思想がまだまだ強いですが、私たちが提供しているサービスは企業の脱炭素、あるいは非常用の電力として防災性を高めることが軸です。
また弊社の薄型軽量パネルが決して安価なパネルではないこともあり、お客様の条件によりますが、ヒナタオソーラーを導入した場合の電力利用料は、既存の電気料金よりも高くなる傾向にあります。
一方、ライフサイクルコストで見たときに、長期的にGHG排出量を削減できたり、専門家に維持管理を任せられたり、防災性を高められたりと、太陽光発電には様々な利点があります。それをどう評価いただけるかが対話におけるポイントだと思っています。このため、お客様との対話を非常に重要視しています。
お客様が電力コスト削減を求めている場合は、当然認識のギャップが発生しますから、対話を通して丁寧に説明し、提案します。その中で、東京ガスグループという安心感、技術力や知見、環境性、防災性といった価値を理解いただき、価格も含めて納得をされてから導入いただくことがとても大切だと思っています。
── 対話から新たな気づきを得る企業様もいらっしゃるのでしょうね。
ヒナタオエナジー来村:提案から2年経って「やっぱりヒナタオソーラーを使いたい」とご連絡をいただいたお客様もいます。提案当初、そのお客様は電力コスト削減に強い意識を持たれていたのですが、時勢に合わせて周囲から求められる企業としての姿も変わり、ヒナタオソーラー導入を判断されたとのことでした。時間はかかっても、私たちの提供したい価値をご理解いただけた喜ばしい出来事でしたね。
導入を検討される企業の皆様には、脱炭素経営に向けてこの先数年ではなく5年後、10年後と中長期的な視点で計画することを強く意識していただきたいとお伝えしています。その際、太陽光発電という地産地消……私たちは「自産自消」と呼んでいますが、自分たちで産み出し自分たちで消費できるエネルギーが非常に大きな意味を持ちます。
その太陽光発電をどう導入、活用していくかはまさしく今多くの企業の皆様が悩み苦しまれているところだと思います。「脱炭素の課題は、誰と会話して解決すればいいの?」と聞かれることもよくあるのですが、ぜひ私たちもその議論に加えていただき専門的な分野からサポートできたらと考えています。
── 実際にヒナタオソーラーを導入された企業の皆様から、脱炭素の視点ではどのような反響が届いていますか?
ヒナタオエナジー来村:実は結論から言いますと、導入されたお客様は脱炭素の実感すらされていないのではないかと思っています。というのも、運用にあたって一切手間がかからないので、お客様からすると「知らぬ間に太陽光の電気を使ってGHG排出量が減っている」という感覚なんですね。私たちとしても、「いつの間にかGHG排出量の削減目標を達成して脱炭素化が実現した」というのが、このサービスの真骨頂だと考えています。ですから、普段は忘れていただくくらいでちょうど良いと思っています。
ただもちろんしっかりとGHG排出量は削減していますので、希望があれば毎月の料金請求と一緒に削減量をお知らせしています。
── それは、お客様の実感につながりそうですね。
ヒナタオエナジー来村:数値の表示方法も少し工夫しています。例えば、アニュアルレポートなどの非財務情報の開示で使われるお客様には、「GHG排出量を○トン削減しました」という表現を使います。一方で、幼稚園などのお客様には「スギの木○本分を削減しました」といったわかりやすい表現を使うケースもあります。
── お子さんたちが環境に興味が湧くきっかけにもなりそうですね。最後に、将来の展望についてお聞かせください。
ヒナタオエナジー来村:ヒナタオエナジーは今後、「PPAモデルの太陽光発電サービスを売る会社」から、「企業の脱炭素に関わるエネルギーの課題解決ができる会社」へと徐々に事業領域を広げていきたいと考えています。今脱炭素に取り組む企業の皆様には、抱えていらっしゃるお悩みや課題を、ぜひ私たちに投げ込んでいただきたいです。その課題に対して、どのような解決策があるか、私たちは何をお手伝いできるのかを議論しながら、一緒に答えを見つけていく。そんな脱炭素経営の伴走支援を目指したいと思っています。
太陽光発電の技術は今後さらに進化するでしょうし、社会の変化やニーズに応じて私たちの提供する価値の形も変わってくると思います。私たちは、できるだけ多くの企業の皆様にその価値を感じていただけるよう、ヒナタオソーラーを軸にしたよりよいサービスづくりにこれからも邁進していきたい。そう考えています。
インタビュー・執筆:吉田裕美
写真:高見知香